2017年7月4日 更新

アルガンオイルを世界に広めた第一人者 シャルーフ教授×木村至信先生 来日対談インタビュー

アルガンオイルで社会を変えたシャルーフ教授の長きに渡る情熱の物語に、芯のある強い女性をテーマに語る情熱女医木村至信がインタビュー! 女性の社会進出、教育、環境保護、アルガンオイルが社会を変え、国を動かす!!

木村至信先生(以下:木村):第1回目のスローフード大賞を受賞されていますが、日本でいうところの“スローフード“より、もっと深い背景があると思います。オーガニックというだけではないのですよね?

ズビダ・シャルーフ教授(以下:シャルーフ):生物多様性の保護、その地域で働く人たちのリテラシーの向上、適正な収入確保などフェアトレードと連動した僻地の伝統農業の活性化が評価され、スローフード大賞を受賞しました。


木村:それではモロッコ女性の社会的地位の向上にも貢献しているのですね。変化の前はどのような状況だったのでしょうか?
注】スローフード大賞とは、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動として、1989年にイタリアで国際スローフード協会が設立された。その際に世界各国の伝統的な農業、その産品の中から、最も評価されたものに授与されるスローフード大賞が設けられた。協会設立後最初の記念すべき賞がアルガンオイルに授与された〈2001年〉。

シャルーフ:一般的に女性の社会的地位は低かったのです。しかも都市部ではなく、僻地のような所に暮らすベルベル女性たちの地位は本当に低く、虐げられている状態でした。

ほとんど社会的には認められず、疎外されてもっぱら家の中で仕事や家事をして閉じ込められていました。
農作業をしても、重労働なことは女性がさせられていました。一方で得た収入は全部夫が主導権を握っていて。

そういった、虐げられ疎外された状態が、実は普通でした。

それが、アルガンの組合活動を通じて改善されていきました。

木村:やはりそれはスローフード大賞があって、国際的に化粧品・食品企業の知るところとなり、次はメディアが逆に『アルガンオイル』や、その背景を取り上げるようになったことで、モロッコの社会に影響を与えたということでしょうか?

シャルーフ:スローフード大賞は、発展の礎になりました。
当初、組合のような組織に、モロッコではこれらの女性が参加して仕事をすること自体考えられないことで、女性が家を出て組合で働くということは極めて困難でした。夫が許可しないということもありました。

そういったことも外部(メディア)からの反響で変わっていったのです。

木村:スローフード大賞は、本当に大きな、大きな変化のきっかけになったのですね。

シャルーフ:スローフード大賞受賞は、通常のマーケティングによるプロモーション活動に換算すると、多額の費用を要するほどの広報的な効果をもたらしました。

木村:私が働く医学の世界は、完全に男性がメインです。女性は妊娠、出産を機にドクターとしてのメインストリームから外れてしまうこともしばしばです。
もっと働きたい、勉強したい、そんな女性もいると思うのですが、最初のモロッコ女性の置かれていた状況、そして現在の状況を教えてください。


シャルーフ:1996年まで働きに出ている人の中でも、読み書き出来ない人が95%以上いました。
現在、読み書き出来ない人は55%まで下がっています。

女性の地位が変わると、そこで得た収入によって、子供に教育を受けさせることも出来るようになり、自分も識字教育や職業教育を受けられるようになりました。

経済的にも意味をもち、社会的にも自分が言葉を分からないことに対して、なんとか学習しようとし、自分を改善しようと自らが考えるように変わっていきました。 全てが変わって良いほうへ回っていったのです。

木村:素晴らしい成果ですね! 教授の印象に残っている出会いやエピソードなどがあれば、お聞かせください。

シャルーフ:エピソードはたくさんありますが、私の身近なケースではこんな女性たちもいます。

ひとつは、ベルベルの既婚女性で、旦那さんが突然亡くなられた方がおりました。自分一人と沢山の子供たちが残されてしまい、そんな中で彼女は働いたこともなく、働くすべもなく途方に暮れ、そんな時にこのテトマチン組合を知り、『働くことは出来ますか?』と訪ねてきてくれたのです。

その段階では、彼女は字も読めないし書けない状態・・・。 それから彼女は組合に入り、組合の活動・教育を通し目覚めていき、モロッコの国会議員にまでなりました。

そうして逆に、彼女が社会活動を率先して行う立場になり、素晴らしい変化を遂げたのです。


木村:それは私の想像を、はるかに超えるほどの大きな変化ですね。

シャルーフ:それからもうひとつ。

アルガンオイルを製造している女性たちが所属する組合、『テトマチン組合』の理事長のアミナさん。
昔は貧しく、やはり字も知らず書けない粗暴な少女でした。

彼女も組合に入り、活動を通して目覚め、最終的には組合の300人近くの指導者となり、今では村の議員にも選ばれるほどに成長したのです。

昔のモロッコでは、到底考えられないようなエピソードなのです。


木村:そのように活躍する女性がいるならば、組合に入りたい女性が後をたたないのでは?


シャルーフ:組合が注目されるようになったのは、スローフード大賞だけではありません。
現国王が王位を継承して初めてフランスを公式訪問した際(2000年3月)に、アルガンオイルの組合の活動を紹介したことも、組合が注目され訪問する人たちが、後をたたないこととなるきっかけとなりました。

国はこのようなアルガンオイルの生産組合の活動に触発されて、他の生産物、サフラン、デーツ、サボテンオイル、ヘナなどの生産を組合による社会開発モデルを採用して進めるようになりました。
木村:この組合の社会的活動が、大変素晴らしいことがよく分かりました。

製品として組合のアルガンオイルが、他のアルガンオイルより優れている点がいくつかあると思いますが、その最も大切にされていることを教えてください。


シャルーフ:香りですね。

製造工程に香りの秘密があります。そして、どのようにしてアルガンの“実“を得るかということが重要です。
アルガンオイルを作るためのアルガンの実は、緑色→黄色に変化し、黄色になったら熟して自然に木から落ちます。
だいたい7〜8月に実が成熟し、アルガンの木から自然に落ちた実のみをアルガンオイルの製造に使うこと。
先ずこれが、クオリティーの第一段階の良さと言えます。


木村:なるほど。 オリーブオイルは実を絞るから、木から実を手摘みしますよね。
アルガンオイルは、実の中の種(仁)を使っているから実を得る方法がポイントなのですね。


シャルーフ:そうです。 オリーブとは異なり、木から実を手摘みするのはクオリティーの点からもNGです。
未熟な果実を使うことになってしまうのです。

それから、モロッコ王国ではアルガンの木になっている実をダイレクトに手摘みするのは、法律で禁止されています。
木を揺らしたり叩いたりして故意に落とすのも禁止です。 あくまで落ちている実のみが使って良いとされています。

理由は、成熟して自然に落ちた実の後に、次の実をつけるから。
自然に落ちた実の後にしか来年の実は生まれないため、揺すったり叩いたりして落とした実の後には、来年からはもう実はつかなくなってしまうのです。

そのような行為は、来年の収穫のチャンスまで奪ってしまうことになるので、法律上禁止されています。


木村:アルガンオイルは、“守りながら作っていく“ということですね。

シャルーフ:アルガンの森を守り、砂漠化を防ぐためにも、またベルベル女性の仕事をなくさないためにも、私たちとともに、国も最近では率先して植林を進め、アルガンツリーを守っております。

木村:普及してくると粗悪な類似品が出てくるものですが、品質を維持するということで、精製過程でどんなことが大変でしたか?

例えば衛生面や、充分な精製とはどのタイミングなのか、そのシステムの構築に関して先生の経験と苦労なさった点もお聞かせください。

シャルーフ:IGP認証の取得です。IGP認証が要求する品質水準を維持することで、この高い品質の違いを得ることができます。

モロッコにはIGPの国内制度がなかったので、国際的な交渉、法律をつくり、指導者の教育トレーニングなど必要な制度化を含め、取得に5年を要し2009年にモロッコ王国が認める本物のアルガンオイルの称号であるIGP認証を無事取得することができました。

とにかくこの地理認証を取得するためには、とても厳しいプロセス(かなり詳細な分析規格)があって、その規格を守るためのプロセスを着実に実施していかないと、この香りにはならないのでとても大変でした。
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この記事のライター

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